木曽の偉大な釣師(1)
のつづき。
師匠と私は、午前中の釣りを終えて宿に戻る。
「どうだい、釣れたかい」
「一匹だけですよ」
「えー、それはさびしい。よし、次の川を教えてあげよう」
と自作の木曽川マップから私たちにあった川を勧めてくれた。
しかし、師匠の体力は限界に達していて、頭がガンガンしていた。
倒れるようにソファーに寝転び熟睡。
私は、翌日のアマゴパーティーのために、是が非でも人数分は釣らなければと
焦っていた。
師匠が寝ている間に、今朝偉大な釣師が興奮して教えてくれた、ポイントに下見に
行くことにした。
ポイントに到着すると、なんと主人がいるではないか。
「ほらほら、沢山いるだろう。今から釣りな」
せっかく、大阪から来たのに「ボウズ」では申し訳ないと、わざわざ
調べに来てくれたのだ。
わたしは、急いで師匠を呼びに宿に引き返した。
私たちは、川を遡上しながら釣る「釣りあがり」がアマゴつりの定説だと思っていた。
このポイントは、粘ってアマゴを誘う。
釣堀みたいだが、後で聞くと、まずこの場所で技術に磨きをかけるそうだ。
宿に戻り、常連さんとの宴会が始まり、アマゴ釣り談義が始まる。
40センチオーバーのアマゴを釣り上げるのは、3年くらいかかる。
仕掛けは、すぐに教えてくれないので、話の中から自分で工夫する。
まずは、携帯電話用あまごストラップをつける。(ほんまかいな)
そして、なにより「アマゴ」を愛して、あまごの生態を研究するそうだ。
木曽の川を制覇した、偉大な釣師。
彼から、沢山のことを学んだ。
お客の技量を見極め、その人にあった川を提供する。
私たちを釣らして喜ばせ、釣りの醍醐味に引き込んでくれる。
一から十の全てを教えずに、お客自ら学習させる。
その方法として、宿の宴会をセッティングする。
まるで、「グループワーク」だ。
すっかり、偉大な釣師のファンになってしまった。
そこには、つりを「哲学」している共同体がある。
来年の再開が楽しみだ。
もちろん、アマゴと偉大な釣師たちとの。